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アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎

はじめに

アトピー性皮膚炎で長年お悩みの方へ

現在の治療に十分に満足していないけれど、このくらいでよいかとなかば諦めた気持ちになってしまっていませんか?お薬がなくなって痒くなったら病院に行く、ということを繰り返していませんか?仕事、学業、部活、遊びなど、全てにおいて最高のパフォーマンスを発揮できないでおられませんか?

最新のアトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021では患者さまと「治療のゴール」を共有し、それに向かって治療を進めていくことが示されました。アトピー性皮膚炎は、近年新しい治療が次々に登場し高いゴールを目指せるようになりました。

当院では、患者さまそれぞれの状況に合わせた治療の提案と指導をしております。一緒に高いゴールを目指しましょう!どうぞご相談ください。

アトピー性皮膚炎とは


アトピー性皮膚炎は皮膚の外的刺激から防御する能力の障害(バリア障害)と過敏に反応する体質(アレルギー体質)によって生じる、慢性皮膚疾患です。

アトピー性皮膚炎の重要な合併症
  • 眼症状(白内障、網膜剥離など):とくに顔面の重症例
  • カポジ水痘様発疹症(単純ヘルペスウイルス感染症)
  • 伝染性軟属腫(水イボ)
  • 伝染性膿痂疹(とびひ )
  • 重症のアトピー性皮膚炎であるにもかかわらず、医療機関での加療を受けておられない方で、菌血症から心内膜炎を起こし、命が脅かされる場合があります。

当院では日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドラインに基づき、患者様一人一人の状態に合わせた標準治療を行っております。

アトピー性皮膚炎は3つの柱から成る標準治療で改善します
  1.  ていねいなスキンケアで清潔な皮膚、肌のうるおいを保ちます。
  2.  皮膚の炎症を抑えるために外用薬による薬物治療を行います。
  3.  症状を悪化させる因子を探し、身の回りからできるだけ除きます。

お子様のスキンケアについて詳しくはこちらをご覧ください。

炎症を抑える

アトピー性皮膚炎の痒い湿疹の症状を抑える基本は、ステロイド外用剤、タクロリムス軟膏(プロトピック軟膏)及びデルゴシチニブ軟膏(コレクチム軟膏)です。ステロイド外用剤は有効性が確かで長い歴史のある薬です。効き目の強さにより5段階に分けられ、症状の程度や塗る部位によって使い分けをしています。

ステロイドの特性を熟知した皮膚科専門医のもとで正しく使用すれば、高い治療効果があり、副作用も心配ありません。

治療のゴール

痒みがなくなるか、もしくはあっても軽微で日常生活に支障がない程度になることが目標です。快適な日常生活を送ることを目標にしています。

治療の成功のため大切なこと
  1. 適切な量の薬を適切な回数外用すること。
  2. 医師の診察を定期的に受けて、皮膚の状態と治療内容があっているかを確認してもらう。

ステロイド外用剤を使用することに不安を持っておられる患者様がいらっしゃいます。多くの不安は適切に使用していないことから生まれる誤解です。たとえば「皮膚が黒くなる」というのは症状にあっている適切な強さの薬を使用していなかったり、十分な量を塗っていないために起こります。

使い方のこつは必要量をたっぷり使用することです。当院では熟練した看護師が塗り方を実演し、患者さまの治療がスムーズに行えるよう指導しております。

塗る回数、量、期間、塗り方について適切に取り組むことで、ほとんどのアトピー性皮膚炎の症状をコントロールできます。

アトピー性皮膚炎のあるお子様の保護者の方へ

小さいお子様は自分の肌を手入れすることができません。最も身近にいる保護者の方がお子様の肌のケアをしなければならないことがほとんどです。子供は必ずしも治療(スキンケア)に協力的ではありません。保護者の方はとても大変です。保護者の方と子供たち自身にお薬の使い方、スキンケアの仕方をお教えし、大変手間のかかる治療やスキンケアのお手伝いをしたいと思っております。子供さんがだんだん成長すると様々な状況で治療がうまくいかなくなることがあります。子供たちが保護者の元から巣立ち、一人暮らしをするようになった時に、自分で自分のマネージメントができるようになって欲しいと思います。病気に対する正しい知識と治療、スキンケアについて子供たちが理解することが、子供たちの将来へのプレゼントになると思っています。根気よく治療とスキンケアを続けましょう。

アトピー性皮膚炎の主な治療の分類

外用治療

全身治療 光線治療

     シクロスポリン内服

     デュピクセント注

     内服JAK阻害薬(オルミエント・リンヴォック・サイバインコ)

     ミチーガ注

     アドトラーザ皮下注

コレクチム軟膏(デルゴシチニブ軟膏)

20年ぶりにアトピー性皮膚炎外用治療薬が新しく発売されました。

外用ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬というお薬です。アトピー性皮膚炎の治療にこれまでに長年使われているステロイド外用剤やプロトピック軟膏とは異なる作用機序でアトピー性皮膚炎の症状を和らげる新しい塗り薬です。

アトピー性皮膚炎の病態には、サイトカインと呼ばれる物質が関与しています。サイトカイン(IL-4、IL-13、IL-31など)が、免疫細胞や神経にある受容体という受け皿に付くと、JAKなどのシグナル経路が活性化され、炎症やかゆみを引き起こします。

コレクチム軟膏は、皮膚から浸透し、細胞内のJAK経路から伝達される炎症を引き起こすシグナルをブロックすることで、皮膚の炎症やかゆみを抑え、アトピー性皮膚炎を改善します。

比較的刺激の少ない薬剤で、従来の外用剤の刺激が強く使用継続が困難であった方にもお勧めいたします。

6ヶ月の乳児から使用できる、ステロイド外用剤以外の抗炎症剤ですので、乳児の繰り返すお顔の発疹に効果を発揮します。

モイゼルト軟膏(ジファミラスト軟膏)

モイゼルト軟膏(一般名:ジファミラスト)は大塚製薬株式会社により開発されました。日本初となるホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害剤の外用薬です。ステロイド外用薬、プロトピック軟膏、コレクチム軟膏と異なる新しい作用機序を持った安全性の高いお薬です。(第4の外用薬と言われます)ステロイドやプロトピックとは異なる作用機序で、アトピー性皮膚炎の炎症を和らげる新しい薬剤です。3ヶ月以上の乳幼児から使用することができ、使用時にプロトピック軟膏のようなほてりやひりつき感、しみるなどの症状が出ることがほとんどありません。これまでのコレクチム軟膏とともに、モイゼルト軟膏が登場することでアトピー性皮膚炎の外用剤の選択肢が広がってきました。

お子様含め、近年アトピー性皮膚炎の患者様が増えています。少しでも症状が軽快し、良い状態を維持できるように、皆様と情報共有して参りたいと思います。

光線治療

難治で従来の治療ではコントロールが難しい方に併用治療として行なっております。定期的に照射をし、毎回患者様の皮膚の状態を診察しながら、適切な照射量を調整し、外用治療が適切に行なわれているかを判断しております。妊婦さんや授乳中の薬剤の使用を制限されている状態の方でも行うことができます。また、デュピクセントやオルミエントなどの全身治療が必要な患者さまであっても様々な事情から導入が難しい方、デュピクセントやオルミエントの投与が一旦終了した後の時々の皮疹の悪化に対して、光線治療を用いて寛解導入、維持を行なっております。

当院では全身型ナローバンドUVB照射機(キャンデラ社ダブリン)、局所型ナローバンドUVB照射機(渋谷工業ターナブ)、エキシマランプ(JMEC社VTRAC)の3台を活用し、患者さまの皮疹の分布や範囲に合わせて治療をしています。

中波紫外線療法 保険適応 3割負担で 1回1,020円となります。

生物学的製剤(デュピクセント®︎)

新しい治療薬「デュピルマブ」(デュピクセント)とは
デュピルマブ(デュピクセント)は、「IL-4」と「IL-13」という物質(サイトカイン)の働きを直接抑えることで、皮膚の2型炎症反応(Th2細胞による炎症)を抑制する新しいタイプのお薬です。アトピー性皮膚炎の皮膚の内部に起きている炎症反応を抑えることによって、かゆみ、炎症や皮膚のバリア機能を改善します。従来の治療をしっかり行なってもコントロールができない重症のアトピー性皮膚炎の方、従来の治療では副作用があり継続が困難な方などが対象になります。

最新のアトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021ではデュピクセントは寛解導入のみならず、寛解維持期にも使用する意義のある薬剤であると示されました。現時点での症状を抑えるのみでなく、潜在的な炎症をしっかり抑えることで、長期に良い状態を作り、ひいてはデュピクセントを中止しても従来の外用治療のみでコントロール可能になる方もたくさんおられます。

2週間ごとの1回の注射代は、発売当初より安くなり、3割負担で17,633円になります(2022年8月に薬価改定)。1ヵ月(その月の1日~末日)の間に医療機関の窓口で支払うべき額(自己負担額)が、一定の金額を超えることになった場合、自己負担額を一定額(自己負担上限額)にまでおさえることができる高額医療費制度の適応になる場合もあります。また所属する会社や健康保険組合で付加給付制度がある場合もございますので所属する会社や保険組合にもご確認ください。医療費の詳しくはこちらをご覧ください。

在宅自己注射ができるようになりますと患者様の通院回数を減らす事ができます。自分で注射を行うことに不安を感じる事があるかと思いますが、当院では医師と看護師が丁寧に使用方法をご説明し、一緒に行なって練習をし、在宅自己注射に移行しております。注射時の利便性の向上が期待されるペン型のデュピクセント皮下注ペン(自動的に薬液が注入されるオートインジェクター)が処方できるようになりましたので、より患者様が使いやすくなっておりますのでご安心ください。

小児にも適応拡大しました。

2023年12月より6ヶ月以上の乳幼児、小児も治療の適応となりました。これまで標準治療でうまくいかなかった患者さまにも全身治療を加えることで、コントロールが可能になって参りました。病気が長期化し、こじらせてしまう前にしっかりとアトピー性皮膚炎のコントロールをすることがとても重要です。まずは外用治療をしっかりとアドバイスさせていただき、どうしてもなかなか症状が落ち着かない患者さまにお勧めをいたしております。まずは医師にご相談ください。

オルミエント錠(内服JAK阻害薬)

コレクチム軟膏と同じ、経口ヤヌスキナーゼ (JAK)阻害剤です。飲み薬で、JAK1/JAK2を阻害します。令和2年12月に既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎に対する治療薬として適応追加されました。

監修:九州大学皮膚科 教授 古江増隆 先生
野村尚史.: アトピー性皮膚炎:皮膚アレルギーフロンティア., 17(1), 27(2019)
椛島健治ほか編集: 野村尚史:エビデンスに基づくアトピー性皮膚炎治療 あたらしい潮流, 中山書店, 22-24(2019)

 

サイトカインとJAKファミリーの関係 オルミエントの効くポイント 

イーライリリー社のサイトより引用 

オルミエントは関節リウマチや新型コロナ肺炎の治療に日本でもすでに使われている薬剤です。

オルミエントの使用については、レントゲンや血液検査などでの結核の確認、B型肝炎、C型肝炎の検査、及び一般的な血液検査が必要です。そのような事前チェックが必要なので、この薬を使用する際は日本皮膚科学会の生物学的製剤使用認定施設か、近隣の内科などの施設と提携し、専用の講習を受けて申請をする必要(当院は講習を受けて学会に届出をしています。)があります。

患者さん負担・費用の目安についての例(薬剤費のみ*)

4mg錠の場合 4週間 8週間 12週間
オルミエントの薬剤費 147,560円 295,120円 442,680円
70歳未満(3割負担) 44,270円 88,540円 132,800円
70-74歳(2割負担) 29,510円 59,020円 88,540円
75歳以上(1割負担) 14,760円 29,510円 44,270円

※2020年12月時点の情報に基づいています。
*実際に窓口で支払う費用は、検査費や治療費、その他の薬剤費、ほかの病気のための治療費や薬剤費などを合計した金額になります。

医療費助成制度(高額医療費制度、医療費控除、付加給付など)があり、収入及び加入している保険組合により経済的な補助があります。

オルミエントを服用している患者様向けのサポートプログラムがあります。(無償)

患者さんに安心して治療をしていただくために、クリニックでのサポート以外にもオルミエントの服用や日常生活に関する疑問、不安の解消をお手伝いするサポートプログラム「オルミエント患者さんサポートプログラム アトピーケア&サポート」もご用意しています。
365日、9時から21時の間、LINEのメッセージ機能またはフリーダイヤル(0120-526-044)を用いてサポートいたしますので、是非ご活用ください。

オルミエントの特徴は、1日1回の内服でいいこと、症状によって量を増減したり、中止、再開をしたりできることがメリットとなります。ただし、デュピクセントと異なり、治療開始前に、感染症などを含めた血液検査、胸部x線検査などが必要となります。

リンヴォック(内服JAK阻害薬)

経口ヤヌスキナーゼ (JAK)阻害剤です。飲み薬で、主にJAK1を阻害します。もともと関節リウマチや乾癬性関節炎に使われていたお薬で、令和3年8月に既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎に対する治療薬として適応追加されました。12歳以上の重症のアトピー性皮膚炎の患者さまにお使いいただけるお薬です。

詳しくはこちらをご覧ください。患者さま向けをクリックしていただけますと、お薬代の試算も可能です。

リンヴォックHP

サイバインコ錠(内服JAK阻害薬)

経口ヤヌスキナーゼ (JAK)阻害剤です。飲み薬で、こちらの薬剤も主にJAK1を阻害します。適応は適切な治療を行なってもコントロールの難しい12歳以上の中等度から重症のアトピー性皮膚炎の方となります。こちらも投与前に感染症等のチェックが必要となります。

 

ミチーガ®︎(ネモリズマブ)

ミチーガ皮下注(ネモリズマブ)はアトピー性皮膚炎の痒みを誘発するサイトカインであるIL-31をターゲットとした世界初の治療薬です。日本の中外製薬が創薬し、マルホ株式会社が承認を得て2022年8月に発売されました。

アトピー性皮膚炎の最も辛い症状は痒みであります。その痒みをターゲットにした薬剤で、痒みを抑え、掻き破ることでさらに痒みが増強するという悪循環(itch scratch cycle)を断ち切ることでアトピー性皮膚炎の症状を軽減させます。アトピー性皮膚炎の痒みの原因物質としてヒスタミンがよく知られていますが、抗ヒスタミン薬では完全に抑えられないとされており、IL-31が中心的な役割を果たすと考えられています。ミチーガは、従来の治療で十分な効果の得られない成人及び13歳以上のアトピー性皮膚炎で、痒みや皮疹が一定以上の重症度の方が対象となります。薬価は1本117,181円で、3割負担の患者さまですと35,154円(薬剤費のみ)となります。(4週間に1回の注射)

詳しくは下記をクリック

アドトラーザ

アドトラーザ皮下注(トラロキヌマブ)はIL-13を選択的に阻害することでアトピー性皮膚炎の治療をする生物学的製剤です。(2023年9月発売)海外では先行してEU加盟国、英国、米国、カナダ、スイスなどで承認されており、日本でも使用できるようになりました。

IL-13(主な働きは①サイトカインなどの化学物質を刺激して炎症反応を増強②皮膚バリアのタンパク質と脂質の発現を低下③抗菌ペプチド産生を低下させることで病原体の持続性を高める④痒みの末梢ニューロンを刺激することで痒みのシグナル伝達を活性化)はアトピー性皮膚炎の病態に関与しており、その働きを選択的に阻害することで、アトピー性皮膚炎の症状を改善する薬剤です。

アドトラーザ®はヒトIgG4モノクローナル抗体で、IL-13と結合し、IL-13とIL-13受容体のサブユニットα1及び α2との相互作用を抑制することでシグナル伝達を阻害します。アドトラーザ®はIL-13を標的として2型炎症反応を抑制し、それによりアトピー性皮膚炎の病態を改善すると考えられています。

投与方法

薬剤費

負担割合

導入初月

2カ月目以降

3割負担

52,731円

35,154円

2割負担

35,154円

23,436円

1割負担

17,577円

11,718円

※いずれも薬剤費のみの計算です。実際の治療の際は、その他診察料などが加わります。
高額療養費制度の自己負担限度額は、年齢や所得によって異なります。また加入の健康保険組合で付加給付金制度がある方もいらっしゃいます。

対象となる患者さま 
  • 15歳以上
  • 従来の治療では十分な効果が得られない方

診察により、導入が適切かどうかの判断となりますので、ご来院のうえ、ご相談させていただきたいと思います。

 

ステロイドって

ステロイド外用剤を使用しているけれど、怖くてちゃんと塗れず、症状が軽快しない患者様にこんなたとえ話をします。

「アトピー性皮膚炎を火事とすると、ステロイド外用剤は消防隊である。」

火災が起きたときは、消防士は適切な消火方法を選択して消火活動に当たります。そして完全に鎮火するまで消火活動を続けます。

アトピー性皮膚炎の治療も同じです。

火事が大規模であれば、ポンプ車を使って消火します。バケツリレーでは消火できません。ポンプ車の水量や水圧を弱めると、消火に時間がかかります。

また火がくすぶっているのに、消えたと途中で消火活動をやめると、その火は再び燃えあがります。

つまり炎症の程度に応じて選択された強さのステロイド外用剤を、十分な量、十分な期間使用しなければ、炎症をきちんと抑えることはできません。もういいだろうと自己判断で治療を中止すると、すぐに再燃してきます。

患者様のみではこれはなかなか判断できません。われわれ皮膚科専門医が患者様の皮膚の状態をみて、今後の治療について判断し、アドバイスしていくことが大切です。定期的な通院により、患者様が薬の特性や使用の仕方、スキンケアの方法について理解を深めて正しい治療をしていただくことを目指しております。

当院では診察の際、毎回全身を診せていただき状態を把握するよう努めております。着脱の簡単な服装、お化粧も落としていただき診察を受けていただきたく存じます。お化粧落とし、個包装タイプの基礎化粧品は当院でもご用意しております。メイキャップ用品はご自身のお使いのものをお持ちください。皆様の大切な診療のため、ご協力をお願い申し上げます。

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