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皮膚科一般

尋常性乾癬

乾癬とは何か?

表皮(皮膚の一番外側)細胞の増殖により、厚い鱗屑(フケのようなもの)がこびりつき、赤いやや盛り上がった紅斑が認められます。人にうつる病気ではありません。

肘、膝、腰、頭部など摩擦が起きやすい場所に生じることが多く見られます。

 

乾癬の種類

  • 尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)乾癬全体の90%

乾癬の中で最も多い種類です。一般に乾癬と言うと、この尋常性乾癬を指します。表皮(皮膚の一番外側)細胞の増殖により、厚い鱗屑(フケのようなもの)がこびりつき、赤いやや盛り上がった紅斑が認められます。

  • 乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)乾癬全体の3−10%

手先や足先に近い関節にはれや痛み、変形などの症状が見られることが多いです。脊椎や靭帯に発症することもあります。関節リウマチと症状が似ていますが、違う疾患です。多くの症例では関節の炎症は左右対称ではなく、障害の起こる関節も少ないのが特徴ですが、関節リウマチと非常に似ていたり、関節リウマチと合併して起こることもあります。乾癬性関節炎の症状は、早期から関節の破壊を生じる例もあり、急速に進行する場合もあります。関節が一旦変形すると元に戻らなくなるため、関節炎に有効な治療を早期から行い、機能障害を起こさず、日常生活のQOL(生活の質)を保つことが重要です。乾癬性関節炎を早期に見つけ出す質問票(PASE ペース:Psoriatic Arthritis Screening and Evaluation)があります。

  • 滴状乾癬(てきじょうかんせん)乾癬全体の4%

若年者に多く見られます。溶連菌感染後などに、直径1cm前後の小型の乾癬の皮疹が急に現れます。多くの場合、外用療法、溶連菌感染の治療などの対症療法で治ります。扁桃腺摘出が有効な方もおられます。時に尋常性乾癬に移行する方もおられます。

  • 乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう)乾癬全体の1%

尋常性乾癬の皮疹が全身に広がり、皮膚全体の80%以上が赤くなった状態です。未治療及び不適切な治療、薬剤や感染症などの影響により、尋常性乾癬から乾癬性紅皮症に移行してしまう患者様が多いようです。

  • 汎発性膿疱性乾癬(はんぱつせいのうほうせいかんせん)非常に稀

悪寒、発熱、全身倦怠感などを伴い、急激に全身の皮膚が赤くなり、その上に無菌性膿疱(うみを持った水疱)が多数現れてきます。放っておくと全身衰弱などにより死に至ることもあります。尋常性乾癬の経過中に生じることもあれば、乾癬の症状がないのに突然生じることもあります。治療は通常の感染とは異なり、入院による加療が必要です。発生頻度は非常に稀ですが、難治性であることや治療に急を要することから、厚生労働省難治性疾患克服研究事業の指定難病に指定されており、認定基準を満たせば医療費助成が受けられます。

日常気をつけること

乾癬は長く続く疾患なので、自分自身が病気を知ることと適切に皮膚科専門医にかかることが大切になります。病気に対する知識と皮膚科専門医のアドバイスで乾癬をコントロールすることができます。皮疹のコントロールが出来るほどに、皮膚もきれいになり、快適な生活を送ることができるようになります。

乾癬をコントロールするために

  • 自分の悪化因子を知り、出来るだけ避けること
  • 毎日のスキンケア、薬の外用をしっかり行うこと
  • 健康的な生活習慣
  • 必要に応じて治療を受けること

皮膚科専門医の診察を受けることは、他にもメリットがあります。乾癬の患者様は、乾癬性関節炎や糖尿病など他の疾患の合併のリスクがあります。そのような視点でも患者様の診察を行っています。もし他の症状の合併が疑われる場合は、その分野の医療機関を紹介し、連携して治療を進めていきます。

乾癬と併存症

乾癬の患者様では様々な疾患が併存して生じやすいとされています。

乾癬ではメタボリックシンドロームを合併することが多く、それらの病気によってもQOL(生活の質)が下がってしまうこともあり、併存する病気の治療も行うことが重要視されています。

  • メタボリックシンドローム

肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症が見られます。40歳代から50歳代で乾癬の症状がひどい方では、動脈硬化や心筋梗塞などの血管の病気を発症しやすいと言われています。乾癬がこれらの病気と何らかの関係があるのであれば、乾癬症状のコントロールによって合併症の発症を予防したり、遅らせたりすることができると考えられています。

  • ブドウ膜炎

ブドウ膜とは眼球を包む血管が豊富な組織ですが、そこに炎症を起こし、視力が低下することがあります。乾癬の患者様の0.4〜0.5%ほどがかかると言われ、関節症状のある方では7〜18%に見られます。

  • うつ

25%の患者様がうつ状態と言われます。うつはさらに心血管系疾患発症の危険性を増加させます。

 

治療

乾癬の治療法には外用療法(塗り薬)、光線療法、内服療法(飲み薬)、注射療法の4種類があります。

  • 外用療法(ステロイド外用剤、ビタミンD3外用剤、ステロイド・ビタミンD3配合剤)

皮疹に直接薬を塗ることで、治療効果を発揮する薬です。免疫の働きを抑えるステロイド外用剤、皮膚の細胞に働きかけて異常な増殖を抑えるビタミンD3外用薬が用いられます。

  • 光線療法(ナローバンドUVB、エキシマライト)

皮疹に紫外線を照射し、症状の改善を促す治療です。UVA(長波紫外線)を用いるPUVA療法、UVB(中波紫外線)を用いるナローバンドUVB療法、ターゲット型光線療法があり、皮疹の範囲に合わせて照射します。

  • 内服療法(ネオーラル、チガソン、オテズラ)

中等症から重症の比較的症状が重い乾癬に用いられます。角質細胞の異常な増殖を抑える薬(チガソン)、免疫の過剰な働きを抑える薬(ネオーラル、オテズラ)が使われます。

  • 注射療法(生物学的製剤:レミケード、ステラーラ、ヒュミラ、コセンティクスなど)

生物学的製剤は免疫細胞の情報伝達に用いられるサイトカインの働きを弱めることで炎症を抑え、皮膚の新陳代謝を調整します。日本皮膚科学会が承認した施設(秋田県では秋田大学附属病院)でのみ治療を開始することができます。

乾癬治療ピラミッド

乾癬の治療法の適応の位置づけを表したものです。治療法には全身に対して治療を行う全身療法(注射、内服、光線療法の一部)と限局した部分に対して治療を行う局所療法(光線療法、外用療法)に分けられます。

 

追記

米国の歌手シンディローパーさんは自身が乾癬であることを告白し、こう語っています。

  • ストレスをマネージメントすることが大事。

瞑想やヨガ、ウォーキングなどでリラックスする時間を作った。

  • 忙しいけれども自分自身をケアする、治療する時間を設ける。

5分でもいいので自分を大切にする時間を作るようにした。ヒット曲を出すのも幸せなことだけれど、歌うことだけでなく、家族のために妻として母としての時間を大切にするようになった。

  • 病気に対する知識が病気をコントロールすることにつながる。

ひどい発疹に悩まされていたけれど、皮膚科専門医での治療を受けることで皮疹をコントロール出来るようになった。人しれず乾癬で悩んでいる人たちのために自分の経験を話そうと思った。

  • 病気がひどくなっても乗り越えられると悩んでいる人たちに伝えたい。私も乗り越えたから。

乾癬でお悩みの方、乾癬かも?と思われた方、どうぞご相談ください。

掌蹠膿疱症

掌蹠膿疱症は、手のひらや足の裏に膿をもった水ぶくれ(膿疱)を生じ、次第に皮が剥けてカサカサになる病気で、治りにくい皮膚疾患の一つです。原因はよくわかっていませんが、扁桃炎、歯周病などの口腔内の病巣感染や歯科金属アレルギーなどが病因に関与しているものもあると考えられています。当院では外用治療、ナローバンドUVB照射、エキシマランプを組み合わせて治療を行っております。また重症の方、関節症状を伴う方に生物学的製剤(トレムフィア)による注射療法もあります。掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)の症状は、体の免疫システムにかかわる「サイトカイン」が関与していると考えられています。
サイトカインとは、様々な刺激によって白血球などの細胞から産生されるタンパク質で、他の細胞へ指令をだす働きをしています。
掌蹠膿疱症では、いくつかのサイトカインが複雑に関与し、症状を引き起こすと考えられています。いずれも体の免疫システムにかかわる重要なサイトカインですが、過剰に増えることで炎症などが起きてしまいます。大学病院など認定施設でのみ実施可能ですので、この治療が望ましいと判断される患者様には適切に認定施設(秋田県では秋田大学附属病院皮膚科)にご紹介いたします。詳しくは掌蹠膿疱症ネットをご覧ください。

しもやけ

冬期間に気温が4~5℃で一日の気温差が10度以上になると、しもやけを起こしやすくなるといわれています。手足、耳たぶ、鼻、頬などに症状が出ます。皮膚が赤く腫れ、ひどいときは潰瘍をつくることもあります。暖まるとかゆみを起こすことも特徴です。

原因

冷たい空気に曝露されることですが、冷気にあたった際の血流障害の程度とそこからの回復に遺伝的な差があって、なりやすい体質の人となりにくい体質の人がいると考えられています。

治療

ビタミンEの塗り薬や、ヘパリン類似物質の塗り薬を使用します。マッサージするように塗ってください。症状が強い場合、範囲が広い場合はビタミンEなどの循環改善薬を内服することもあります。手袋、マスク、耳当てなどの防寒具で冷気をしっかり避けるようにしましょう。また濡れた手袋や靴下を着用したままにしていると皮膚温が下がりしもやけを起こしやすくなります。こまめに乾いたものに取り替えるよう心がけてください。

注意

若い女性に起こることの多い、エリテマトーデスという病気があり、しもやけに似た症状を示すことがあります。エリテマトーデスは他の内蔵病変を伴うことがあり、皮膚症状のみではしもやけとの区別が難しい場合があります。血液検査などで詳しく調べることによりはっきりしますので、しもやけを何度も繰り返したり、症状が強い人、長引く人は一度皮膚科を受診して検査を受けられることをお勧めします。

トンズランス感染症 (マット菌)

ここ数年、日本各地でトリコフィトン・トンズランスという新しい水虫菌が外国から持ち込まれ、柔道やレスリングをはじめとする格闘技選手の間で流行していることが問題になっています。この病気は格闘技選手のみならず、家族内感染により主婦の方や幼児、高齢者にも感染が見られ、格闘技をしないからといって他人事ではありません。正しく治療すれば怖い病気ではありませんが、治療を怠ると保菌者となり感染源になります。

最近、中学校の体育で柔道が必修となりました。このため、トンズランス感染症が拡大するのではないかという懸念があります。

症状

通常のたむしより非常に症状が軽く、擦り傷やかぶれと思われることも少なくありません。格闘技の性質上、顔、頭、頚など上半身に見られます。頭ですとブラックドットといわれる、黒い点々が毛穴に見られ、脱毛を伴うこともあります。

診断

この病気の診断にあたっては、医療側からみても難しく、格闘技を行っているという情報、注意深い診察と、真菌検査が必要になります。

治療

つけ薬ではなかなか菌はなくならず、可能であれば飲み薬での治療が勧められます。また、格闘技選手においては予防策として、トレーニング後のシャワー励行とともに、抗真菌剤含有シャンプーの使用も勧めています。クラブ内で多発することもありますので、発症した方がおられたら、他の部員に同様の症状がないかの確認をして、早期発見早期治療をすることが肝心です。所属する団体によっては、試合前にドクターチェックがあり、試合に出られないこともありますのでご注意ください。

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