虫刺され
蚊などによる虫刺され
虫刺されは大変身近な皮膚病です。特に夏に患者さまのご相談が増加します。実際に刺している場面を見ることは少ないのが実情ですので、人に被害を与える虫の種類や生態、生息地をよく知り、どんな皮膚症状を引き起こすかを知っておくと役に立ちます。
最も多い虫刺されは蚊によるものでしょう。
蚊は体長5mm程度で、メスが吸血します。通常は露出部(顔や手足)を刺します。蚊は人家周辺、野山などどこにでも生息します。庭や公園などではヤブカ類のヒトスジシマカ、室内ではイエカ類のアカイエカが多いようです。
虫刺されの反応
- 即時型反応:刺された直後から生じるかゆみ、発赤、蕁麻疹などが出現する反応。
- 遅延型反応:虫に刺されて1〜2日後にかゆみ、発赤、ブツブツ、水ぶくれなどが出現して、数日から1週間で軽快するという反応。
これらのアレルギー反応は、虫に刺された頻度やその人の体質によって症状の現れ方に個人差が大きいのが特徴です。
これらの反応は下記の様に年齢とともに変化しますが、実際には個人差があります。
乳幼児期 |
遅延型反応のみ |
幼児期〜青年期 |
即時型反応と遅延型反応の両者 |
青年期〜壮年期 |
即時型反応のみ |
老年期 |
いずれの反応も生じない |
治療
虫刺されの治療は、軽症であれば市販薬でも良いですが、赤みや腫れが強い場合はステロイド外用剤が必要です。症状が強い場合は抗ヒスタミン薬の内服も必要になりますので、皮膚科専門医を受診するのが良いでしょう。しかしこれはあくまでもその時の症状を和らげる治療なので、原因虫からの回避、駆除対策を実施しなければ新たな虫刺されの症状が出現する可能性があります。
虫除け剤について
ディート(DEET)とイカリジンの大きく2種類があります。効果はほぼ同等です。ディートは10〜12%製剤と30%製剤があります。副作用の観点から対象年齢が異なります。濃度が高いほど忌避効果の持続時間が長くなります。
ディート10〜12%製剤 | 6ヶ月以上12歳未満の小児 |
ディート30%製剤 | 12歳以上 |
イカリジン | 年齢制限なし |
上記を参考に製品の説明をよく見てからお選びになってください。
最も重要なのは、塗り残しがないようにすることです。ディートもイカリジンも、人を吸血対象と識別できなくすることです。ですので塗り残しがあるとその部位は吸血可能エリアとして探知されてしまいます。
参考
成分 |
年齢 |
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製品名(販売元) |
6ヶ月未満 |
6ヶ月から12歳未満 |
12歳以上 |
イカリジン |
◯
|
◯
|
◯
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天使のスキンベープミストプレミアム(フマキラー) |
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虫除けキンチョールDF(大日本除虫菊) |
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プレシャワーDFミスト(大日本除虫菊) |
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ディート10〜12% |
× |
◯ |
◯ |
サラテクトウォーミスト(アース製薬) |
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スキンベープミスト(フマキラー) |
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虫除けキンチョールローズの香り(キンチョー) |
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ディート30% |
× |
× |
◯ |
医薬品サラテクトリッチリッチ30(アース製薬) |
|||
医薬品スキンベーププレミアム(フマキラー) |
和田康夫. What’s new in 皮膚科学2020-2021:226-227